前職の経験と行政書士業務との相乗効果(環境等の法令対応、官公署対応)を生かし、中小企業のQMS/EMS構築を支援するため、行政書士事務所を開所しました。
ある日、顧問先の従業員の方から「離婚後、養育費が払われず困っている。何とかなりませんか?」との相談を頂きました。
聞けば、シングルマザーになって5年。小学生のこどもを抱えて、賢明に頑張ってきたとのこと。月額3万円の養育費を貰って、なんとかやりくりができているのに・・・と、途方に暮れていました。
離婚後は、こどもに会いに来なかったものの、養育費だけは毎月きちんと振り込まれていたのに、突然、連絡も無く送金が止まった様子。離婚時に離婚協議書を作成しておらず、全てが口約束でした。父親との接触を試みましたが、アパートは転居した後で行方知れず。
やっとのことで元夫と連絡が取れたのは、2ケ月後。
夫は、転職直後に交通事故を起こし、退職。次の転職先が見つからず、自分の生活が精一杯。誰に相談したら良いかも分からず、誰にも相談できず、そして誰にも頼れず。どうすることもできなかったので、元妻から逃げるように身を隠したとのこと。
妻には妻の事情(婚姻当時のトラウマ)があり、また頼れる人もおらず、連絡できなかったとのこと。双方の「気持ちの壁」が障害となって、意思疎通ができていませんでした。
双方を仲介し、養育費を月額2万円に減らして継続するという和解が成立したのは、それから半年後。この成功体験を足かがりに、弁護士とは違う、行政書士にしかできない離婚相談を事業の柱にすべく一念発起しました。「心の解決をお手伝いします」をキャッチコピーに順調にお客様が増え始めた二年目、不運が重なります。
当時、8組ほどの事件を抱えておりました。教科書通りに進め、丁寧な相談を実践していたにも拘わらず、不成立事案が続きます。理不尽な逆恨みも受けてしまい、離婚相談の、似たようなケースはあっても同じ内容は二つとない難しさ、人の「心の解決」の難しさに直面します。
意思の衝突は紛争状態ですが、離婚は合意しているのに感情が衝突して話が進まないという事案について、スムーズに進行することができていませんでした。悔しさを抱きながら、新しい知見の収集に挑戦すべく、ADR(裁判外紛争解決手続き)講習を1年間受講することにしました。並行して、初歩的な心理学セミナーを複数受講し、どうしたら円満な離婚が実現できるのかを徹底的に研究し、感情の衝突を避けるための相談方法を考案しました。
抽象的な表現ですが、当事者すら気付いていない夫婦双方の心に刺さっているトゲを探して見つけ、それを抜き取ることが出来るか否かが円満解決の鍵となり、ひたすら傾聴を続け全てを吐ききることのお手伝いが、本人が“納得する”ことへの王道となります。愚直に実践を積み重ね、300組以上のご夫婦を円満離婚へと導くことができました。
では、円満に離婚が成立すると、どんなメリットが生まれるのか?
例えば、養育費の支払いについて。
養育費の未払いは8割(*)にも及びますが、弊事務所では1割に過ぎません。
権利者・義務者間の通知手段、面会交流、塾や習い事・進学先等の方針協議などを総合的に整理・進行し、円満離婚へと導くことで、離婚後の紛争はかなりの確率で防ぐことができる、と感じています。その基礎となるのが、感情の衝突を避けた話合いの実現です。“納得して”約束したことであれば、きちんと守ります・・・というシンプルな結果に繋がります。
私の知識やノウハウを、円満な離婚を望むご夫婦に活用して頂きたい。
「社会の最小のコミュニティである家庭内の揉め事を解消し、争いごとのない世界の実現に貢献する」との志を掲げ、日々奔走しています。
(*)出典 令和4年度養育費の不払い解消等に向けた自治体における法的支援及び紛争解決支援の在り方に関する調査研究報告書/公益社団法人商事法務研究会