面会交流で揉めていました

夫30歳(会社員)、妻31歳(会社員)。借家。預金500万円。

婚姻6年目。同居中。

こども一人(5歳)。

東北地方出身のご夫婦で、転勤で栃木県内に在住されていました。

転勤を巡って夫婦仲に亀裂が入りはじめ、栃木に引っ越してきてから子育てについても意見が対立するようになり、離婚することに決めたそうです。

離婚後は、妻と子が実家に戻り、夫は引き続き栃木県内での勤務を続けるということで話が纏まっているとの状況。養育費をはじめ、夫婦間でかなり細かく決められておられました。

面会交流については、毎月第1日曜日に実施すると合意されていました。その後、夫が交通費を負担して欲しいとハードルを上げてきたので、揉めてしまったと来所されました。

夫は、養育費を支払う上に往復4万円もの交通費を毎月負担することはできない、との主張。これに対して妻は、「こどもに会う、会わせないと揉めてしまうなら分かるが、交通費で揉めるなんて信じられない」と一蹴。

更に、夫は「交通費を負担しないのであれば、親権は譲らない」とヒートアップし、感情の衝突が始まったところで、初回相談が終了。

夫のヒアリングを進めて行くと、夫の本心としては、妻子に近隣に留まっていて欲しかったと吐露。こどもには愛情があるので、養育費をケチるつもりはないし、面会交流も時間が許せば月に2〜3回くらいは会いたいとのこと。

どうして妻にその気持ちを伝えないのか問うと、「妻には会いたくない」とのこと。

こどもの年齢に鑑みて、親権者同席は致し方ないということも理解はされている様子でしたが、ランチを食べるくらいの1〜2時間程度であれば、こどもと二人で過ごしたいという気持ちがある、とも。

この点も、どうして妻にその気持ちを伝えないのか問うと、「妻には頭を下げたくない」とのこと。

妻に夫の希望を伝え、離婚後、県内に留まる選択肢は考えないのかと問うと、アパート賃料負担が大きいため、実家に帰るしか無いとのことでした。どうしても実家で無ければならないという理由はないが、金銭的な面でそうするしかないとの回答。

なかなか合意点が見つからず、苦肉の策として、夫が描いている離婚後の生活の理想像と、妻が描いているものをそれぞれ整理し、突合してみました。紆余曲折を経て、なんとか合意成立。

最終的に、夫が交通費相当額の二分の一を養育費に上乗せして支払い、妻は実家へ帰らず県内で就業を継続することで合意となりました。

話合いの途中で、家庭裁判所が監修した面会交流のビデオを夫婦双方に視聴して貰いました。その後、夫の「こどもと接し続けていきたい」という気持ちと、妻の「こどもの面倒は見続けて欲しい」という気持ちが着地点となり、合意に至りました。

妻は「養育費だってケチっていたのに・・まさかこんな合意に至るとは」と驚いておりましたが、納得できるまで話合いが出来て良かったと喜んでおられました。

将来の怨恨を残さず、夫婦双方に有益な結果が得られたであろう事案でした。

 

*中立離婚アドバイザーから離婚を考えているあなたへ

転勤されて環境が変わり、ご夫婦の心の亀裂が徐々に広がっていきました。特に子育てに関する価値観がぶつかり合い、ふたりの絆は脆くも崩れてしまったのです。そして、妻と子は実家に戻り、夫は栃木で働き続ける。これが新たな生活の形となるはずでした。養育費については細かな取り決めがあったものの、感情の波はまだ静まることがありませんでした。夫は、「交通費を負担してほしい」との思いを口にし、事態は再び緊張状態になりました。

妻は、「子どもに会う・会わないで揉めるのは分かるけれど、交通費なんて本当に信じられない!」と語気を強めます。一方、夫は「養育費を支払っているのに、毎月4万円の交通費を負担するのは無理だ」と主張。感情の衝突がヒートアップし、冷静さを欠く空気が続きました。

話合いを進めて行くと、夫の心の奥には「離婚後も妻子には近くにいてほしい」という思いが見え隠れしてきました。愛情は残っているが、会いたくない。まるで矛盾した想いに、本人も気付いているのかいないのか、しかし苦悩していることは明らかでした。妻にその気持ちを伝えられない理由を問うと、「頭を下げたくない」という一言が返ってきます。

お互いの主張の背後には、感情と愛着が交錯していました。ご夫婦の主張は、金銭的理由が根底にある事も見えてきました。

離婚後の姿についてお互いの理想を語り合い、何度も話し合いを重ねる中で、少しずつ歩み寄りが見えてきました。「子どもと接し続けたい」という夫の思いと、「子どもの面倒は見続けてほしい」という妻の願いが着地点となりました。

夫が交通費の一部を養育費に上乗せすることで双方が納得できる形となり、妻も「こんな結果になるなんて思わなかった」と驚きつつも、着地点が見つかったことに喜びを噛みしめていました。

この事例から学べることは、お互いの気持ちをじっくりと聞き合うことが、思わぬ解決策を導くことになるということです。感情が絡み合う中でも、話合いを諦めないことで、未来の自分たちにとってより良い選択ができることを忘れないでください。

あなたの心の中にも、解決のヒントがきっと隠れているはずです。

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