夫54歳(公務員)、妻53歳(専業主婦)。持ち家。預金3千万円。
婚姻28年目。別居中2年目。
こども二人(成人・独立済み)。
こどもの独立を機に、「今後の人生について、お互いに冷静に考えましょう」と合意別居して2年目。
「何か明確な理由がある訳ではないが・・・卒婚みたいなもの」との難しい説明から始まりました。別居してから、妻は夫からの送金とパート収入を合わせて生活をしていました。
夫は、「経済的負担が大きい」「同居しないなら、離婚もあり」との主張。妻は、離婚には反対しないが、離婚後の生活(経済的な)が不安とのことで、条件整理が難航しそうな気配。
夫は、「預金を折半(財産分与)するだけでも充分に生活できる筈だ」と主張。それに対し、妻は「それは老後資金として手を付けたくない」ので、生活資金が足りないと主張。収入アップのために就職を検討すること無く、従来通り夫に依存。
夫の気持ちを酌んで再び同居してはどうか?と促したところ、妻は明確に拒否。顔を見ないから夫婦で居られるとの回答。同居義務や扶助義務について説明すると、理屈は分かるが兎に角離婚後の生活費を心配しているということが浮き彫りになってきました。
弊所での話合いに並行して、こども等が離婚を回避して当面別居でどうか?と説得を試みてきたようですが、夫が拒否。更には、妻がこどもとの同居を打診するものの、こどもが拒否。すると、思うように進まないことに腹を立てた妻が、弊所での話合いを拒否してきました。
すると、こども二人が来所。夫婦とこども達、三つ巴の思惑が絡み合ってしまい、膠着状態に。
夫婦のことだから、夫婦の気持ちを優先してあげてと助言するものの、こども達は「自分たちに今から親の面倒を見ろというのは酷すぎる」とのこと。離婚を回避できた事例や先送りとなった事例を説明して、解決策を思案頂くが、纏まりませんでした。
暫くして、こどもに連れられて妻が来所。
双方が核心的に譲れない点をもう一度整理して、話合いを再開。そして、妻が夫の退職金分与を求めない替わりに、妻の離婚後の生活支援として就職するまで(最長4年)、夫が生活費の送金を継続する(上乗せする)ことで合意。双方納得して離婚が成立。
こどもが小学生になったころから、離婚の話は出たり消えたりを繰り返してきていたそうです。妻は、夫の定年退職までと我慢しておりましたが、65歳定年に延びてしまい、且つ、年金支給年齢も上がってしまい、離婚のタイミングを失っていたとのこと。
こどもや孫と同居して・・・と思っていたが、甘くは無かったと落ち込まれておりました。結果として、暫くはこれまで通りに生活費が送金されるので、ピンコロ目指して頑張りたいと前向きになっておられました。
夫は、こどもから「今から母親の面倒を見させられるのは困る」と泣きつかれたそうです。これが決め手となって、生活費の上乗せを決心されたとのこと。
熟年離婚は落とし所が見つからずに長期化する事案が多いのですが、独立されたばかりのこどもさんの言葉が背中を押した事例でした。
*中立離婚アドバイザーから離婚を考えているあなたへ
「今後の人生について、お互いに冷静に考えましょう」と別居を決めてから2年が経ち、その間、心の中には様々な葛藤が渦巻いていたことでしょう。「明確な理由はないけれど、まるで卒婚のようなもの」と、なかなか言葉にできない感情を抱えているのも理解できます。
夫からの送金とパートの収入で生活をしてきましたが、夫の「経済的負担が大きい」「同居しないなら離婚もあり」という言葉が、妻の心の奥深くに重くのしかかっていました。一方で、離婚には反対しないものの、離婚後の生活がとても不安でしかたないというのも事実。法律的な説明は理解できても、心の奥に潜む不安、特に離婚後の生活費の心配がどうしても拭い去れないのでした。
また、妻の不安は、夫だけでなく子どもたちとも複雑に絡み合っていました。離婚を回避したいという子どもたちの思いを受け流そうとしても、それは一筋縄ではいかない。どこを見ても、思うように進まない状況に苛立ちを覚え、これまでの自分を責める気持ちすら抱いていました。
夫は「預金を折半するだけでも生活できる」と言いますが、それに対して「それは老後資金にしたい」と強く抵抗していました。妻の本心は、自立への一歩が踏み出せない苦悩、夫に依存する関係から抜け出せないことだ、ということに気付かれました。
話し合いの着地点として、「離婚後の生活支援として就職するまでの生活費を夫が送金することで合意する」という結論に至りました。こどもが小学生になったころからの離婚の話、そのたびに何度も出たり消えたりしてきたことでしょう。妻の「我慢」が、この瞬間でやっと解放されたのかもしれません。
この事件では、子どもたちの素直な言葉で夫の心が動きました。
熟年離婚は、落とし所が見つからず長引いてしまうことがあります。長年、心の奥底にしまっていた「離婚」の文字。ご夫婦にとって決して後ろ向きな選択ではなく、新たな始まりの一歩となりました。
この記事が、熟年離婚に悩む方の勇気になれたら幸いです。
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